日本政府観光局によると、2024年の訪日外国人観光客(インバンド)は3,600万人を超え、過去最多となりました。

人気観光地では、地域住民への影響や観光客の満足度低下、自然環境への負荷など、オーバーツーリズムの問題が深刻化しています。

その解決策として、「時間の分散」と「場所の分散」への取り組みが進められているそうです。

たとえば、冬に集中するスキー客を分散させるために夏のアクティビティを充実させたり、昼間に混雑する桜の名所で夜間ライトアップを実施したりといった施策が行われています。

いま、日本人の投資環境においても、オーバーツーリズムに似た「集中」の問題が生じつつあると感じています。それは、全世界株式ファンドへの投資の偏りです。

全世界株式ファンドは優れた投資商品ですが、一極集中によるリスクも考慮する必要があります。今回は、そのリスクと分散投資の意義について解説します。

全世界株式ファンドが優れた投資商品である理由

全世界株式ファンドは、世界中のさまざまな企業に幅広く投資できる商品で、一つのファンドで複数の国や地域に分散投資することが可能です。

全世界株式ファンドの主な利点は次の2つです。

  • リスクの分散:特定の国や企業の経済状況に左右されにくい。
  • 企業の入れ替え:市場の変化に応じて、成長する企業へ自動的にシフトされる。

この仕組みにより、世界経済が成長し続ける限り、「ほったらかし」でも資産を増やせる可能性が高いのです。

全世界株式ファンドの代表的な商品として、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)があります。2025年2月末時点で約5.5兆円もの資金が流入しており、多くの日本人が投資を続けています。

株式のリスクを正しく理解しよう

受講者様から「みんなが選んでいる商品だから安心ですよね?」と聞かれることがあります。

「長いものには巻かれろ」ということわざがあるように、多くの人と同じ行動を取ることに安心感を覚えるのは自然なことです。しかし、投資において「みんながやっているから」という理由で選ぶのは危険です。

どんなに広く分散されたファンドでも、株式である以上、価格の上下動は避けられません。市場は上昇と下落を繰り返しながら成長するものだからです。

重要なのは、「リスク=価格の変動」であり、「危険」ではないということを理解すること。

自分が保有しているファンドがどの程度の値動きをする可能性があるのかを把握することで、不安を減らし、長期的に投資を続けることができます。

株式市場は割高になっている?

コロナ禍からの回復とともに、世界経済は成長を続けています。その影響で株式市場には楽観ムードが広がり、多くの投資資金が流入しています。

米国株を中心に「割高」と言われる水準になっていることも、意識しておくべきポイントです。

下図は、フェデリティ投信が配信している記事からの転載です。米国の代表的な株価指数「S&P500」のPER(株価収益率)と、投資後のリターンの関係性を示しています。

参照元:フェデリティ投信【マーケットを語らず Vol.183】『先送り・偽り経済』のゆくえ

PER(株価収益率)は株価の「割高」「割安」の判断基準として使われる数字であり、15倍を超えると割高と評価される傾向があります。

S&P500の直近のPERは22.3倍であり、割高な水準といってよいでしょう。

過去のデータでは、PERが20倍を超えるような水準で投資をした場合、その後10年間のリターンがマイナスになるケースが多く見られます。

株価が割高なときに投資すると、長期的なリターンが小さくなる可能性があることを理解しておくべきと思います。

世間が株式投資に傾倒している今、分散投資の意義が問われる

「株価が割高なら、下がるまで待ったほうがいいのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、株価が割高な状態は数年続くこともあり、待ち続けている間に投資の機会を逃すことになりかねません。

そこで有効なのが、オーバーツーリズム対策でも紹介した「時間の分散」と「場所の分散」です。

  • 時間の分散:毎月一定額を積み立てることで、高値づかみを防ぎ、価格変動リスクを抑える。
  • 場所の分散:特定の国や資産に偏らず、異なる資産にも投資することでリスクを低減する。

たとえば、全世界株式ファンドはその名の通り「世界中に分散投資できる」とされていますが、実際には6割以上が米国株に投資されています。

そのため、米国以外の株式市場や、値動きの異なる債券・ゴールド・リートなどを組み合わせることで、より安定した資産運用が可能になります。

「価格が下がっても一時的なものだから、気にしなくてよい」という意見もあります。

しかし、頭では理解していても、実際に大きく値下がりしたときに冷静でいられるかは別問題です。

歴史を振り返ると、株式市場の下落は数年間続くこともあり、悲観ムードが広がるなかで不安を感じずにいることは決して簡単ではありません。

だからこそ、何があっても安心して投資を続けられるよう、事前にリスク管理をしておくことが大切だと考えています。

まとめ

全世界株式ファンドは、シンプルで優れた投資手段ですが、リスクがゼロではありません。

現在のように市場が割高な局面では、将来のリターンが低くなる可能性もあり、分散投資の重要性が増します。

時間の分散(積立投資)と資産の分散(株式以外の資産を組み入れる)を意識することで、市場の変動に左右されにくい安定した投資が可能になります。

投資は、長く続けてこそ成果が出るもの。安心して継続できる環境を整えておくことが大切です。

投稿者プロフィール

前野なおひと
前野なおひと老後資金づくりを支援するFP
1974年兵庫県生まれ。大阪府在住。
20年余りの会社員生活を経て、46歳で独立。

かつてはお金の知識ゼロから独学で投資を実践し、具体的な資産計画を描くことで、組織に縛られない自由な働き方を手に入れました。

現在は、保険・金融商品の販売を一切行わない、完全中立のFPとして活動しています。特定の商品をすすめる立場に立たないからこそ、ご家庭の状況と目標だけを起点に、老後資金づくりの計画策定から実行まで一貫してサポートできると考えています。

老後のお金に不安を感じている方が、「自分らしく、安心して暮らせる未来」を描けるよう、資産バランスの整え方や具体的な行動の道筋を、わかりやすくお伝えすることを活動の軸としています。

学びのプラットフォーム「ストアカ」では、資産運用講座の受講者が延べ700名を超え、最高ランクの「プラチナバッジ」を取得。書籍の執筆やブログを通じた情報発信にも取り組んでいます。

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