はやいもので、今年も残り1ヶ月となりました。今回は、NISA利用者が2024年中にやっておくべきことについて解説します。

結論として、やるべきなのは「金融資産の棚卸し」です。これをやることで、家庭の資産状況が明確になり、将来的に家計が改善したり、資産が増加したりすることにつながります。

「金融資産の棚卸し」を実践しよう

「棚卸し」とは本来、企業が商品や原材料の在庫を点検・確認する作業のことですが、これを家計の金融資産にもあてはめることができます。

金融資産とは、お金に換算できる価値をもつ資産のことであり、預貯金、投資信託、不動産などが相当します。これらの残高をチェックして、各資産の保有割合を計算・確認するのが「金融資産の棚卸し」です。

なお、持ち家など不動産をお金に変えるのは手間がかかりますので、定期的な棚卸しでは、預貯金や投資信託など現金化しやすい(=流動性が高い)資産について実行することをおすすめします。

証券口座の資産棚卸し

証券会社のウェブサイトにログインすると、その日の「評価額」と「評価損益」が表示されます。

評価額とは「今売却したらいくらの金額になるか?」という資産価値のことであり、評価損益とは売却時に発生する利益や損失のことです。

たとえば、評価額が200万円、評価損益が+40万円と表示されていたとします。

この場合、自分が投資したお金の合計額(元本)は160万円であり、元本より40万円増えて200万円の資産価値になっているという意味です。

証券口座に保有している投資信託や株式の「評価額の合計額」を、棚卸し時点での「リスク資産残高」としてノートに書くか、表計算ソフトに入力します。

なお、2023年以前から投資をしている人は、新NISAの「つみたて投資枠」や「成長投資枠」だけでなく、「旧つみたてNISA」や「特定口座」など複数の口座をお持ちの場合もありますが、まずはすべてを合計した評価額をチェックしておいてください。

各資産の割合をチェックしてみよう

銀行預金の残高についても確認したら、各資産の残高と割合を計算してみましょう。たとえば、以下のような具合です。

【2024年12月末の家計資産残高】

リスク資産(NISA内の投資信託の評価額):200万円

銀行預金:600万円

この場合、金融資産の合計額は200万円 + 600万円 = 800万円であり、そのうちリスク資産の割合は200万円 ÷ 800万円 = 25%となります。

銀行口座を目的別(生活費用、貯蓄用など)に分けている人は、それぞれの金額と割合をわけて記載するとわかりやすいです。

ご家庭の保有資産の管理状況に合わせて、自分がわかりやすいように分類するのがポイントです。

棚卸しの時期と頻度について

金融資産の棚卸しは、毎年同じ時期にやることで1年間の資産の増減が明確になります。

私自身は、一年の締めくくりとして毎年の年末(12月最終週)に実施しています。

年末にこだわらなくても、「年始のほうがゆっくり時間がとれる」なら1月でもよいし、「会社と同じで家計も3月決算にしたい」なら3月末に実施すればよいです。

私のクライアント様は、年末年始のタイミングで棚卸しを実行されている方が多いです。

また、棚卸しの頻度については、家計資産全体のチェックは年に一回で十分です。

ただし、複数の投資信託を保有されている方は、後述のようにリバランス目的での棚卸しを3ヶ月~半年間隔くらいで実行してもよいと思います。

金融資産の棚卸し後にやるべきこと

棚卸しの結果をもとにして、投資の計画や資産配分についての見直しを実行しましょう。

投資計画の見直し

まずは、資産全体に占めるリスク資産の割合が適切かどうかを確認します。

預貯金とリスク資産の最適な割合(どれくらい投資にまわすか?)は、家庭によってさまざまです。

「他の人はどれくらい投資にまわしておられますか?」というご質問をよくいただくのですが、収入と支出のバランス、ライフプランなどによって最適な投資割合は千差万別です。他人と比べるのではなく、自分に合った割合で投資をすることがもっとも大切です。

銀行預金にまだまだ余裕がある人は、毎月の積立額を増やしてもよいかもしれません。

逆に、リスク資産の割合が大きくなり過ぎている人は、積立額を減らす必要があるかもしれません。

投資を始める前に計画をしっかり立て、家計管理が適切にできている人ほど、変更することなく投資を継続できるでしょう。

リスク資産の割合の見直し

全世界株式やバランスファンドなどを用いて、投資信託1本のみで積立投資をしている人は、「投資対象の見直し」という意味ではなにもする必要はありません。(自分に合った商品が選択できていることが前提です。)

一方で、複数の投資信託を保有している人は、「リスク資産のリバランス」を行なうことを推奨します。リバランスとは、崩れた資産割合をもとに戻すことを意味します。

投資信託の種類によって値動きが異なるため、運用を続けていくうちに、計画した投資割合と現在の評価額が大きく乖離する場合があります。

複数の投資信託に分散投資する意義は、資産全体のリスク(=値動き)を小さくできる点にあります。しかし、計画した配分と大きく乖離していくと、予想以上にリスクが大きくなるおそれがあるため、リバランスにより適正なリスク水準で運用を続けていくことが重要です。

また、リバランスは「割高になった資産から、割安になった資産にお金を振りわける」行為であるため、長期的には運用効率が高まることが期待できます。

さいごに

日々の値動きに一喜一憂することなく普段は「ほったらかし」にしておいて、定期的な「金融資産の棚卸し」を実行することが、安心して投資を継続しながらしっかりと資産を増やすことにつながります。

棚卸しは慣れれば短時間で終わりますし、資産状況が明確になることで資産形成へのモチベーションも高まります。

ぜひ、2024年の締めくくりとして、NISA口座や銀行口座のチェックをしてみていただければと思います。

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投稿者プロフィール

前野なおひと
前野なおひと老後の安心を育てる🌱資産形成・お金のパートナー
「人に教える仕事がしたい」という想いから会社を辞めて独立し、以前から取り組んでいた投資の知識を活かして資産運用講座をスタート。ところが、受講者の多くが抱えている老後資金への不安を解消するには、資産運用の知識だけでは不十分であり、家計や保険、年金など幅広い「お金の知識」が必要なことに気づく。そこで、お金の専門家であるFP資格を取得し、一人ひとりの状況に応じたサポートを開始。FPとしての専門知識を深めることで「寄り添ってもらえる」「安心して相談できる」と評価されるようになり、成長を遂げる。現在は、主に老後資金への不安を抱える女性に対して、完全に独立したFPとして中立な立場でのFPコンサルタントを通して、適切な家計管理や資産形成をサポート、自由で豊かな老後を実現していただくための基盤づくりに貢献している。また、学びのマーケット「ストアカ」の講師として650名以上に対し資産運用などを教える講座を開催し、最高ランクのバッジである「プラチナ」を取得。現在も引き続き講師活動を展開している。

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