2024年1月に大きく改正されたNISA制度も2年目を迎え、投資を始める人が増加しています。

金融庁の調査によると、2024年9月末時点でNISA口座数は2,500万口座を突破し、日本人の4人に1人がNISA口座を保有する時代となりました。

また、前回の記事でも述べたように、2024年の金融市場は好調で、NISA利用者の多くがプラスのリターンを得ています。

このように投資市場が盛り上がる一方で、あえて警鐘を鳴らしたいことがあります。それは、投資の基本原則を理解していないと、せっかく始めたNISAでも資産を減らしてしまう可能性があるということです。

今回は、NISAで資産を増やせる人と減らしてしまう人の決定的な違いについてお話しします。

投資の3原則とNISAの関係性

投資の3原則とは、分散投資、積立投資、長期投資の3つです。これらを守って投資をすることで、元本割れを防いで確実に資産を増やすことができると言われています。

NISA制度には「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの投資枠があります。これらのうち、「つみたて投資枠」は幅広い投資対象に「分散」されたインデックスファンド等で、毎月一定額を「積立」するルールとなっており、3原則のうち2つをだれでも満たすことができます。

一方、3原則のうち3つ目の「長期投資」だけは、投資している人自身の裁量に大きく委ねられることになります。インデックスファンドに限らず、投資信託や株式は「売り注文」を出せば簡単に手放して現金化することができるからです。

インデックスファンドの場合、短期保有ではあまり増えないだけでなく、元本割れするおそれがあります。目安としては10年~20年程度の長期保有により、元本割れの可能性が大きく減少し、複利効果によって大きく増やすことが期待できるようになります。

ところが、QUICK 資産運用研究所の調査によると、2024年3月時点でファンドを購入してから解約(売却)せずに継続保有している人の保有期間は全ファンドの平均で2.9年となっています。平均的にみると、たった3年程度しか投資信託を保有できていないのが日本人の現状なのです。

ここに、NISAで資産を増やせる人とそうでない人の、決定的な違いが生まれます。

平均保有期間を大きく超えてインデックスファンドを保有し続けることができた人だけが、資産をより確実に大きく増やせるということなのですね。

長期保有できない理由①~原則理解の欠如

なぜ、投資信託の平均保有期間はたった3年なのでしょうか?

その理由のひとつは、上記で説明したような「長期投資」の重要性を知らずに投資をしている人が多いからだと思います。

投資信託を購入してみたものの、「思ったより増えない」と感じたり、少し値上がりしただけで「下がる前に利益を確定させたい」と考えたりして、手放してしまう人が多いのが現状なのでしょう。

もしあなたが、「将来のために積立を始めたので、数年以内に売却するつもりはない」と考えておられるなら、それはとても素晴らしいことです。インデックスファンドはそもそも、「長期保有して増やすための金融商品」なのです。

長期保有できない理由②~価格下落への恐怖心

ここで、一つ質問をさせてください。もし、保有しているインデックスファンドの評価額が、購入時の半分になったら、あなたはどうしますか? (評価額とは、投資信託を売却したときに現金化できる金額のことです。)

  1. 何もせずに保有し続ける
  2. 追加で投資(買い増し)する
  3. 売却して銀行預金に変える

いかがでしょうか?

これら3つの選択肢のなかで、一つだけ絶対にやってはいけないものがあります。それは、3番の売却してしまうことです。

インデックスファンドの評価額が半分になったときにすべて売却すれば、大きな損失が確定してしまいます。たとえば、100万円で購入したインデックスファンドの評価額が50万円に下がったときに売却すれば、50万円 - 100万円 = -50万円となり、50万円の損失が確定します。

たとえ一時的に半額になったとしても、そこで売却せずに回復するまで待つことが重要なのです。

1番や2番を選んだ人は、投資の基本がしっかりと身についておられますが、それでも油断は禁物です。頭で理解しているのと、実際に体験してみるのでは大きな違いがあるからです。

リーマン・ショックが発生した2008年には、全世界株式指数(円換算後)は1年間で約53%も下落しました。年初に100万円の評価額であったものが、年末には約47万円にまで減少してしまったのです。

このようなときには、世界中に悲観的なニュースが溢れます。投資信託の価格が下落し続けるなかで平静を保ち、長期保有を貫くのは想像以上に難しいと思います。

やめないための処方箋

暴落は、今後もいつか発生する可能性が高いと思います。世界の株式市場は、暴落と暴騰を繰り返しながら成長してきた歴史があります。

価格下落への不安を抑え、安心して投資を続けるための対処法をいくつかご紹介します。

まず、すぐにできる方法として、「投資信託の値動きをあえて見ない」という選択があります。相場が好調なときは資産が増えていくのを見るのが楽しいものですが、逆に値下がりしたときに不安を感じるなら、「半年後や1年後まで見ない」と決めてしまうのも一つの手です。

特に、ネガティブな情報ほど広まりやすい傾向があるため、SNSやニュースを意識的に遮断することも、心の平穏を保つうえで大切だと思います。

次に、複数の資産に分散投資をすることも有効です。株式だけでなく、債券などを組み合わせることで、値動きを抑え、リスクを軽減できます。心配性な人ほど、分散投資のメリットを活かす価値が高いでしょう。

「価格変動が怖いな」と感じる方は、あらかじめリスクを下げる工夫をしておくことをおすすめします。

また、積立投資においては、「価格の下落=将来の利益を大きくするチャンス」だと考えることが重要です。積立投資では、価格が安いときに多くの口数を買えるため、将来的に価格が上昇したときの利益が増えます。

価格が下がると「損をしている」と思いやすいですが、「安く買えてラッキー」と捉えることで、積立投資を続けやすくなるはずです。

まとめ

NISAで資産を増やすためには、投資の基本原則である「分散投資」「積立投資」「長期投資」をしっかり理解し、実践することが不可欠です。

特に「長期投資」は、自分の判断で続ける必要があり、価格が下落しても動じずに保有し続ける強さが求められます。

市場の動きに一喜一憂せず、価格が下がったときも冷静に対処する心構えが、最終的に資産を大きく増やす鍵となります。

暴落時こそ冷静さを保ち、積立投資の効果を信じて継続していきましょう。

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投稿者プロフィール

前野なおひと
前野なおひと老後の安心を育てる🌱資産形成・お金のパートナー
「人に教える仕事がしたい」という想いから会社を辞めて独立し、以前から取り組んでいた投資の知識を活かして資産運用講座をスタート。ところが、受講者の多くが抱えている老後資金への不安を解消するには、資産運用の知識だけでは不十分であり、家計や保険、年金など幅広い「お金の知識」が必要なことに気づく。そこで、お金の専門家であるFP資格を取得し、一人ひとりの状況に応じたサポートを開始。FPとしての専門知識を深めることで「寄り添ってもらえる」「安心して相談できる」と評価されるようになり、成長を遂げる。現在は、主に老後資金への不安を抱える女性に対して、完全に独立したFPとして中立な立場でのFPコンサルタントを通して、適切な家計管理や資産形成をサポート、自由で豊かな老後を実現していただくための基盤づくりに貢献している。また、学びのマーケット「ストアカ」の講師として650名以上に対し資産運用などを教える講座を開催し、最高ランクのバッジである「プラチナ」を取得。現在も引き続き講師活動を展開している。

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