2024年の株式市場は総じて好調な動きを見せ、多くの投資家が大きなリターンを享受できた1年でした。
背景には、インフレの鎮静化や利上げペースの緩和、経済成長の回復などがありましたが、円安ドル高の進行も海外資産に投資する個人投資家には大きな追い風となりました。
このような追い風の中で、「もっと投資額を増やしたい」という気持ちが生まれる方もいると思います。
しかし、投資で成功するためには、短期的な結果に惑わされず、冷静な判断を下すことが求められます。本記事では、2024年の主要資産(NISAでも投資できる資産)のリターンを振り返りながら、2025年に向けた投資の考え方について解説していきます。
2024年の主要資産リターン
次のグラフは、NISAでも投資できる主要な9つの資産タイプと、円相場(米ドル/円)について2024年の増減を示したものです。

2024年に最も増えた資産は、株式でもリートでもなく、なんとゴールドでした!
1年で38.4%もの上昇となり、もし、2024年初に100万円をゴールドに投資していれば、2024年末には138万円の価値になっている計算です。
続いて、先進国株式が+31.1%、国内株式が+20.5%、新興国株式が+18.1%と、株式市場も好調な年となりました。
一方で、国内債券は-2.9%、国内リートは-4.0%といずれもマイナスリターンであり、株式以外の国内資産は低迷期となっています。
また、円相場(米ドル/円)が9.3%のプラスとなっていることも見逃せません。これは、2024年にさらなる円安が進行したことを示しています。
日本国内から海外資産に投資した場合、円安が進むと資産価値が上昇し、円高が進むと下落します。そのため、先進国株式やゴールドなど海外資産のリターン上昇には、資産自体の価値上昇に加えて円安の影響もあるのです。
2024年の好況をどう判断するか?
長期・分散投資において、期待できる年平均リターンは4~5%程度と言われています。
2024年は多くの資産タイプでこの数字を大きく上回る年間リターンとなっており、まさに「絶好調」な状態です。
このような時期の特徴として、「投資額を増やしたい」というご相談をいただく機会が増える傾向があります。
しかし、好調な時期だからこそ、投資額を増やすことには慎重になるべきだと私は考えています。
なぜなら、リターンが大きくなっているということは、各資産が持つ「本来の価値」より「現在の価格」が高くなっている(=割高になっている)可能性があるからです。
投資で利益を出すためのシンプルな基本原則は、「安いときに買って、十分に高くなってから売却する」ということです。
いまが割安か、割高なのかということは、投資判断をするうえで重要な要素の一つだと思います。
ゴールドに投資するべき?分散投資の考えかた
上記のとおり、2024年の年間リターン第一位はゴールドでした。このような結果をみると、「ゴールドにも投資しておいたほうがよいか?」と考える方もいらっしゃると思います。
私個人としては、ゴールドへの分散投資はとても有効であると考えています。ゴールドは株式など他の資産タイプとは値動きのタイミングが異なる傾向があり、「分散効果」が高いためです。
ただし、「いまゴールドへの投資割合を増やすべき」とは考えません。その理由を、過去の実績を参照しながら説明します。
次の表は、主要な9つの資産タイプと円相場(米ドル/円)について、2010年と2013年のリターンを示したものです。

先に2013年の結果をみてください。2013年は株式やリートなど多くの資産で2024年を上回るたいへん好調な年でした。
その一方で、ゴールドだけが-11.8%とマイナスリターンとなっていることがわかります。
マイナスリターンということは「安くなっている」わけですから、本来はこのような不調期にゴールドへの投資割合を増やすほうが、賢い選択なのですね。
それから、先程の表で2010年の成績をみてください。先進国株式や先進国債券がマイナスリターンであるのに対し、国内リートが34.1%とダントツのプラスリターンとなっています。
2024年のリターンで最下位であった国内リートが、第一位となる年もあるのです。これは2010年だけに限らず、たとえば2010年~2024年の期間に、国内リートがリターン第一位だった年は4回もあります。
ということは、国内リートに投資するべきタイミングはいつか、、、もうおわかりですよね。
他人と違う行動をとることの難しさと大切さ
「人の行く裏に道あり花の山」という投資格言があります。
これは、他の市場参加者と逆の行動をとったり、注目を集めていないことに注目したりすることで利益を得ることができるという意味の格言です。
現実には、他人と異なる行動を取ることは、心理的な不安や孤独感につながりやすため難しいものです。多くの人と同じ行動を取るほうが安心感を抱きやすく、「間違いではない」と思いやすいのですね。
周囲と逆の行動を取るには、正しい知識を身につけたり、良いアドバイザーを見つけたりすることで、自分の判断を信じられるようになることが重要です。
長期投資は「ほったらかし」が重要と言われますが、これは多くの人が想像している以上に難しいものです。
実際、市場が長期低迷する時期には、投資から脱落する(保有している投資信託等を売却してしまう)人が多いという、歴史が証明している事実があります。盲目的に周囲と同じ行動をとることで、損失につながるおそれがあるのです。
市場に大きな変化が起こったときにも冷静でいられるよう、しっかりした根拠に基づいて他者と違う行動を取れることが大切だと思います。
まとめ
2024年は、多くの主要タイプが例年以上に好調なリターンを記録し、特にゴールドや先進国株式が目を引く成績を残しました。
海外資産のリターンが良かった背景には円安の影響も大きく、投資家にとっては嬉しい年だったと言えますね。
ただ、こうした「好調な年」こそ注意が必要だとも思います。リターンが高いと「もっと投資額を増やしたい!」と感じる方も多いでしょうが、市場が割高になっている可能性もあります。
やみくもに投資するのではなく、リスクを抑えながら安定的に資産を増やすためには、分散投資を意識することが大切です。
また、「他人と違う行動を取る」というのは簡単ではありませんが、それができるかどうかが投資成功の鍵になることも多いです。
自分の判断を信じ、長期目線で冷静に投資を続けることが、最終的に資産形成の成功につながるのではないでしょうか。
投稿者プロフィール

- 老後の安心を育てる🌱資産形成・お金のパートナー
- 「人に教える仕事がしたい」という想いから会社を辞めて独立し、以前から取り組んでいた投資の知識を活かして資産運用講座をスタート。ところが、受講者の多くが抱えている老後資金への不安を解消するには、資産運用の知識だけでは不十分であり、家計や保険、年金など幅広い「お金の知識」が必要なことに気づく。そこで、お金の専門家であるFP資格を取得し、一人ひとりの状況に応じたサポートを開始。FPとしての専門知識を深めることで「寄り添ってもらえる」「安心して相談できる」と評価されるようになり、成長を遂げる。現在は、主に老後資金への不安を抱える女性に対して、完全に独立したFPとして中立な立場でのFPコンサルタントを通して、適切な家計管理や資産形成をサポート、自由で豊かな老後を実現していただくための基盤づくりに貢献している。また、学びのマーケット「ストアカ」の講師として650名以上に対し資産運用などを教える講座を開催し、最高ランクのバッジである「プラチナ」を取得。現在も引き続き講師活動を展開している。
最新の投稿
資産運用2025年3月6日全世界株式ファンド一本で大丈夫?分散投資の意義を改めて考える
NISA2025年2月27日「わからないから始めない」を乗り越える!資産運用の最初の一歩
家計管理・支出削減2025年2月20日賃貸 vs 持ち家、どっちが正解?私が賃貸を選び続ける理由
NISA2025年2月6日新NISA2年目の落とし穴?資産が増える人と減る人の決定的な違い
お問い合わせ
お悩み・お困りごとは、
お気軽にお問い合わせください