先日、楽天証券から「NISAの使い方10箇条」という文書が発表されました。

以下、楽天証券のプレスリリースから一部引用します。

「新しいNISA制度が始まり半年が経ち、多くのお客様から(中略)NISA口座の使い方についてご相談やお問い合せを多数いただきました。楽天証券は、(中略)あらゆる層のお客様が多様な選択肢を持てる新NISAを、ご自身の資産づくりに有効活用いただく指針を提案することが、より多くの方に新NISAを有効活用していただけるきっかけになると考え、このたび、以下の「楽天証券が考えるNISAの使い方10箇条」を公開しました。」

1. まず「つみたて投資枠」から -成長投資枠は余裕があれば

2. 毎月一定額を積み立て -収入の10%からが目安

3. NISAで利益を非課税にする -複利効果を加速

4. 早くはじめる -それだけ運用に有利

5. 投資先は複数に分ける -タイプが異なる資産に分散

6. 長期で投資をつづける -短期の値下がりは気にしない

7. NISAは必要なら売却 -非課税枠は翌年復活

8. 年金目的ならiDeCo -60歳まで引き出し不可 

9. 状況に応じて銘柄を入替え -非課税枠復活を活用

10. 家族全員でNISAを使う -ひとり1,800万円をフル活用

引用元:楽天証券、「NISAの使い方10箇条」を公開

今回は、ファイナンシャル・プランナーおよび個人投資家の目線から、私なりにこの10箇条を評価してみたいと思います。

NISAを有効活用するための参考にしていただけると幸いです。

楽天証券「NISAの使い方10箇条」を検証してみる

それぞれの条文について、◎(完全に同意できる)、◯(おおむね同意できる)、△(同意できる部分もあるが、注意も必要)の3段階で判定していきたいと思います。

1.まず「つみたて投資枠」から -成長投資枠は余裕があれば

これは完全に同意できます。

「つみたて投資枠は若い世代向け」というイメージをお持ちの方もいますが、そんなことはありません。

世代に関わらず、まずはつみたて投資枠から利用して、余裕があれば成長投資枠も検討するのが正しい順序です。

2.毎月一定額を積み立て -収入の10%からが目安

「毎月一定額を積み立て」については、そのとおりだと思います。

もし、ある程度まとまった資金がある場合も、一括投資ではなく数年(3~5年が目安)に分けて積み立てることを推奨します。

3.NISAで利益を非課税にする -複利効果を加速

NISAの非課税効果は、最大限に活用するべきです。

運用を長く続けて、将来の利益が大きくなるほどに、非課税であることの効果が高まります。

また、年末調整や確定申告などの税金手続きを一生涯やらなくて良いことも、非課税の大きなメリットです。

4.早くはじめる -それだけ運用に有利

資産運用を成功させるには、長く続ける(長く保有し続ける)ことが大切です。

「長く続けるために、早くはじめたほうがよい」と理解するのがよいと思います。

とはいえ、「今月から始めなきゃ」と焦ることはありません。

情報を集めたり、計画を立てるのに数ヶ月かかったとしても、自分に合った資産運用にすることのほうがよりよい結果につながります。

5.投資先は複数に分ける -タイプが異なる資産に分散

将来は不確実だからこそ、いろいろな資産に分けておくことが大切です。

「なるべくリスクが低い運用をしたい」と考える人ほど、タイプが異なる資産への分散は有効な手段です。

投資信託をうまく利用すれば、少ない銘柄数できちんと分散させることができます。

6.長期で投資をつづける -短期の値下がりは気にしない

「長期で投資をつづける」とは、「ずっと保有し続ける」ことであると解釈しましょう。

値下がりは気にしないのが正解ですが、それでも気になってしまうのが人間心理です、、、

「値下がっても大丈夫」と納得できるように、正しい知識を身につけましょう。

7.NISAは必要なら売却 -非課税枠は翌年復活

NISA制度には、売却についての制限はありませんので、必要ならいつでも売却して現金化できます。

しかし、購入金額を下回っている(=元本割れしている)タイミングで売却すると、損失が確定してしまいます。

長期保有するほど、元本割れの確率は低くなりますので、最低でも5年以上、できれば10年以上は売却しなくても大丈夫なように、資金計画を立てておくことが重要です。

8.年金目的ならiDeCo -60歳まで引き出し不可

iDeCoは60歳まで引き出し不可なので、年金(=老後資金)目的になることは確かです。

一方で、iDeCoは収入などの条件次第で、NISAよりも節税効果が高い場合もあれば、逆に不利になる(受け取り時に税金が多く発生する)場合もあります。

「年金目的ならNISAよりも良い」と安易に考えず、自分に必要かどうかを見極めることが大切です。

9.状況に応じて銘柄を入替え -非課税枠復活を活用

投資信託を保有する場合、銘柄は最初にきちんと選んだら、できるだけ入れ替えしないことが重要です。

とくに、短期間(投資を始めて数ヶ月~数年以内)での銘柄入れ替えは、推奨できません。

銘柄の入れ替えは、「老後に資産を取り崩すとき」など、仕事や生活の状況に大きな変化が生じた場合に限ったほうがよいと思います。

10.家族全員でNISAを使う -ひとり1,800万円をフル活用

NISAの生涯投資上限は成人一人につき1,800万円であり、家族全員でNISAを利用したほうが、世帯全体で非課税運用できる金額が大きくなります。

このような投資上限は別にしても、これからの時代は一人ひとりが自分名義の資産をきちんと管理することがより必要になると思います。

総評

楽天証券の「NISAの使い方10箇条」は、全体的に納得できるものが多かったです。

さすがはNISA開設数が520万口座(2024年7月時点)を誇る大手証券会社だけあり、ユーザー目線での発信にはおおむね好感がもてました。

一方で、10箇条のうち後半部分には、少し注意が必要というか、誤解を与えるかもしれない内容も見受けられます。

NISAの制度的なルールにとらわれすぎず、自分の資産状況や将来目標にあった使い方をすることが大切だと思います。

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投稿者プロフィール

前野なおひと
前野なおひと老後の安心を育てる🌱資産形成・お金のパートナー
「人に教える仕事がしたい」という想いから会社を辞めて独立し、以前から取り組んでいた投資の知識を活かして資産運用講座をスタート。ところが、受講者の多くが抱えている老後資金への不安を解消するには、資産運用の知識だけでは不十分であり、家計や保険、年金など幅広い「お金の知識」が必要なことに気づく。そこで、お金の専門家であるFP資格を取得し、一人ひとりの状況に応じたサポートを開始。FPとしての専門知識を深めることで「寄り添ってもらえる」「安心して相談できる」と評価されるようになり、成長を遂げる。現在は、主に老後資金への不安を抱える女性に対して、完全に独立したFPとして中立な立場でのFPコンサルタントを通して、適切な家計管理や資産形成をサポート、自由で豊かな老後を実現していただくための基盤づくりに貢献している。また、学びのマーケット「ストアカ」の講師として650名以上に対し資産運用などを教える講座を開催し、最高ランクのバッジである「プラチナ」を取得。現在も引き続き講師活動を展開している。

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