証券口座は、投資をするために証券会社などの金融機関で開設する口座のことを指します。

最近はインターネットで取引できるネット証券で投資をするのが主流になってきていますが、証券会社の選びかたや口座開設手続きのやり方がわからずに、スタートできない初心者も多くいます。

今回は、NISAを利用して投資を始めたいと考えている初心者向けに、証券口座と銀行口座の違い、おすすめのネット証券会社、口座開設の流れについて解説します。

そもそも証券口座とはなにか?

投資・資産運用が初めてであれば、証券口座と聞いてもイメージしずらいと思います。

ここでは、事前に知っておきたい証券口座の基礎知識についてお伝えします。

銀行の預金口座と、証券口座の違い

証券口座とは、資産を運用するための専用口座です。投資をするためのお金や、購入した金融商品(投資信託、株式、債券など)を保管することができます。

生活のために利用する銀行口座とは異なり、給料や年金を受け取ったり、公共料金を引き落としたり、といった用途に証券口座を利用することはできません。

証券口座に預けたお金はどこにある?

ネット証券会社の場合、口座に入金したお金は「預り金」として保管されるのが一般的です。

預り金には金利がつきませんが、厳重に保護されているので安心して預けておくことができます。

というのも、証券口座では顧客から預かるお金や金融商品(投資信託、株式、債券など)を、証券会社の持っている資産と分けて管理することが義務付けられています。

これを「分別管理」といいます。

もし証券会社が破綻することがあったとしても、顧客の資産は返還されるのです。

さらに、万が一分別管理が適正に行なわれていなかったとしても、投資者保護基金によって顧客一人あたり1,000万円まで補償が受けられます。

※投資者保護基金に加入しているのは、ネット証券会社や店舗型証券会社です。銀行で証券口座を開設した場合は、投資者保護基金の対象外となります。

証券口座はどこで開始できる?

証券口座を開設できる金融機関は、「ネット証券会社」と「店舗型(対面型)金融機関」に大別されます。


ネット証券会社は、すべての手続きを自宅で完結できる、手数料が安い商品(投資信託等)が豊富にあるなどのメリットがあります。

その反面、口座開設から買付まで、すべての手続きを自分でやる必要があります。


一方、店舗型金融機関には、銀行や信用金庫、店舗型証券会社などがあります。

口座開設や売買などの手続きを窓口で相談しながら実行できる反面、手数料が安い商品(投資信託等)が少なかったり、商品やサービスを勧誘される場合があるといったデメリットがあります。

ほとんどの人には、商品選びで圧倒的に有利なネット証券会社でNISAを始めることをおすすめします。

但し、インターネットでの手続きにどうしても自信が持てない人は、次のような「条件付き」で店舗型金融機関を選択するのも有りです。

①窓口で投資手段や商品の選択についての相談をしたり、勧誘に乗ったりしない

②投資対象をつみたてNISA(2024年からはつみたて枠)の対象銘柄のみに限定する

ネット証券会社と店舗型金融機関の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

つみたてNISAは銀行と証券会社のどっちがよい?

「つみたてNISAに興味があるけれど、どこで始めたらよいかわからない」という悩みをお持ちの方はとても多いです。 そこで今回は、投資初心者がつみたてNISAを始めるのに適…

ネット証券の選びかた

最近ではさまざまなネット証券会社があり、どこで口座をつくるのが得なのか迷っている人も多いと思います。

ここでは、自分に合ったネット証券会社を選ぶ方法について解説します。

大手2社(SBI証券、楽天証券)がおすすめ

ネット証券会社の有名どころとしては、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、松井証券などがあります。

これらのうち、大手2社のSBI証券か楽天証券をおすすめします。

その理由は、上記2社の口座開設数が圧倒的に多いからです。参考までに各ネット証券会社の口座数を記載します。

◇2023年3月時点での口座数ランキング(参照元:YAHOO!JAPANファイナンス

SBI証券:1,000万口座

楽天証券:900万口座

マネックス証券:222万口座

auカブコム証券:155万口座

松井証券:143万口座

たくさんの人が利用しているので、世の中に出回っている情報量が多いうえに、総合的なサービス力でもこの2社が優れていると思います。

なお、現行のつみたてNISAや2024年に予定されているNISA制度改正後の「つみたて投資枠」で資産運用をする人にとっては、選択できる銘柄の種類や、投資をするときの手数料に、ネット証券会社による違いはほとんどありません

厳密には、現行の一般NISAやNISA制度改正後の「成長投資枠」を利用する場合は、取り扱い商品の種類や売買手数料にネット証券会社による違いが出てきます。

しかし、成長投資枠の利用は中級者以上の投資家のみに推奨されるものであり、これから資産運用を始めようとする人は気にしなくてよいでしょう。

SBI証券と楽天証券のどちらがよいか?

次に、SBI証券と楽天証券のどちらを選択するべきかの基準について記載します。

SBI証券が向いている人

・業界最大手という安心感に惹かれる人

・TポイントやVポイントを利用している人

・三井住友系列のクレジットカード決済で積み立て投資をしたい人

・ゆくゆくは積み立て投資以外にも挑戦してみたい人

楽天証券が向いている人

・楽天経済圏(楽天市場、楽天ポイントなど)をよく利用している人

・楽天クレジットカード決済で積み立て投資をしたい人

・ウェブサイトの使いやすさを重視したい人

SBI証券は業界最大手ということで信頼感もあり、総合的なサービス面でも一歩抜けている印象です。

ただし、ウェブサイトがやや使いにくいのはSBI証券のデメリットかと思います。

楽天系のサービスを利用している人、ウェブサイトの操作性を重視したい人は楽天証券にしておくことをおすすめします。

繰り返しになりますが、ネット証券の選択による損得をあまり気にする必要はありません

各社はサービスを競っており、優劣つけがたいレベルにあるからです。

SBI証券と楽天証券で迷ったら、両方のウェブサイトにアクセスして「見やすさ、分かりやすさ」という観点で気に入ったほうを選ぶ、くらいでも問題ないと思います。

ネット証券の開設方法

ネット証券が選択できたら、いよいよ申し込み手続きを実行しましょう。

ここでは初心者がつまずきやすいポイントを中心に、NISA口座開設の流れを説明します。

口座開設申し込みの流れ

口座開設までのおおまかな流れは次のようなステップになります。

※証券会社によって一部順番が異なる箇所もあります。

① ネット証券のウェブサイトで口座開設ボタンをクリック(タップ)

まずはSBI証券や楽天証券のホームページにログインし、口座開設ボタンから手続きに進みます。

【参考】

SBI証券の口座開設サイト

楽天証券の口座開設サイト

② 本人確認書類(運転免許証またはマイナンバーカード)の提出

本人確認書類はコピーを郵送することもできますが、スマートフォンで現物を撮影してアップロードする方法が便利です。

③ 本人情報、開設する口座等の入力

氏名、住所の入力や、開設する口座の種別などを選択します。

口座の種別選択には、「課税口座の選択」と「非課税口座(NISA)の選択」の二つがあります。

課税口座の選択については、次項で説明します。

また、NISA口座は、投資初心者には「つみたてNISA口座」を推奨します。

つみたてNISAがおすすめな理由についてはこちらの記事を参照ください。

つみたてNISAが投資初心者におすすめな3つの理由

老後資金や子育て資金など、将来のお金について漠然とした不安を持ちつつも、、、 投資や資産運用と聞くと「投資なんて私には無理」と最初から決めつけている人は多いので…

④ 口座開設通知の受け取り

メールまたは郵送にて口座開設の通知を受け取ります。(受け取り方法は申し込み時に選択します)

⑤ 初期設定

口座開設通知を受け取ったあと、始めてウェブサイトにログインするタイミングで初期設定を行います。

初期設定が終わったら、投資信託の選択や積立設定ができるようになります。

課税口座の選択~特定口座とはなにか?

証券口座の開設にあたり、最初に課税口座の種別を選択する必要があります。

NISA口座のみ利用する人は課税口座を使いませんが、非課税期間が終わった後など、将来的には課税口座を利用する可能性はあります。

課税口座種別には、「一般口座」と「特定口座」があり、特定口座はさらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」に別れます。(下図参照)

一般口座は売買の管理をすべて自分でやることになるため、おすすめしません。

証券口座が年間の取引履歴を管理してくれる特定口座を選択しましょう。

源泉徴収とは、投資で利益が出たときにかかる税金を、証券会社が代わりに納税してくれるしくみです。

源泉徴収なしの特定口座は自分で確定申告することになるため、初心者は源泉徴収ありの特定口座にしておくことを推奨します。

パスワードは大切に保管しよう!

ネット証券を利用するとき、2つのパスワードがあることを覚えておいてください。

ひとつはウェブサイトにログインするときのパスワード、もう一つは積み立て設定などの売買取引をするときのパスワードです。

この取引用パスワードは、SBI証券では「取引パスワード」、楽天証券では「取引暗証番号」という呼称となっています。

いよいよ積み立て設定をして運用スタートする段階になって、この取引パスワードがわからずに頓挫するケースもありますので、忘れないようにしっかりメモを取っておきましょう!

口座開設Q&A

最後に、クライアント様からよくいただく質問をまとめておきます。

Q) つみたてNISAとNISAは、どちらを選んだらよいですか?

A) NISAは非課税期間が短い(5年)ため、非課税期間が20年と長いつみたてNISAをおすすめします。なお、どちらを選択しても、2024年からは自動的に新NISA制度に切り替わります。

Q) iDeCo、FX口座、信用取引などの選択肢もあるのですが、申し込んだ方がよいですか?

A) iDeCoは人によって要否が分かれるので、必要と分かっている人のみ申し込みしましょう。また、FXや信用取引は初心者向けではないので、推奨しません。

Q) ネット銀行(楽天銀行、住信SBIネット銀行口座等)も同時に申し込んだほうがよいですか?

A) これまでにネット銀行を利用したことがなければ、最初は申し込みしないほうが無難です。IDやパスワードの管理が煩雑となるので、口座開設したものの結局使用しない方も多いです。ネット銀行は後から必要に応じて開設するのがよいでしょう。

Q) 初期設定の「投資に関する質問」で上場会社に勤めているかを聞かれました。これは家族も関係ありますか?
A) 生計を共にする家族であれば対象となります。

Q) SBI証券を開設するときの国内株式手数料プランとは何ですか?

A) 国内株式の売買をするときの手数料プランです。つみたてNISAを開始する人には関係ないので、どちらを選んでも問題ありませんが、将来的に個別株取引もやりたい人はアクティブプランを選択しておくとよいでしょう。

Q) 配当金受領方法を聞かれたのですが、どうすればよいですか?

A) 「株式数比例配分方式」を選択しておきましょう。これもつみたてNISAのみ始める人には関係ない選択です。株式数比例配分方式にしておくことで、株取引などで発生した配当金を証券口座で受け取ることができます。

まとめ

証券口座とは、投資をするときに株式や投資信託などの金融商品を預けるための口座です。

給料の受け取り、光熱費の引き落としのような銀行口座としての機能は、証券口座にはありません。

証券口座を開設できる金融機関には、ネット証券会社と、銀行などの店舗型金融機関があります。

これらのうち、商品選びで圧倒的に有利なネット証券会社でNISAを始めることをおすすめします。

また、ネット証券会社のなかでは大手2社のSBI証券か楽天証券が、情報量の多さやサービス力で優れていると思います。

ネット証券会社を開設するときは、ウェブサイトにアクセスして「口座開設ボタン」をクリックまたはタップし、表示される手順に沿って手続きします。

必要なものは、登録用のメールアドレス、本人確認証(免許証、マイナンバーカード)です。

口座の種類については、NISA口座は「つみたてNISA」、課税口座は「特定口座(源泉徴収あり)」を選択するのがおすすめです。

証券口座やNISA口座を開設するときに、手数料はいっさいかかりません。

また、口座を開設したからといって、そのまま勝手に投資が始まるわけではありません。

投資・資産運用に興味を持ったら、まずはネット証券口座の開設だけでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

NISA口座での商品選びについては、こちらの記事で解説しています。

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前野なおひと
前野なおひと老後の安心を育てる🌱資産形成・お金のパートナー
「人に教える仕事がしたい」という想いから会社を辞めて独立し、以前から取り組んでいた投資の知識を活かして資産運用講座をスタート。ところが、受講者の多くが抱えている老後資金への不安を解消するには、資産運用の知識だけでは不十分であり、家計や保険、年金など幅広い「お金の知識」が必要なことに気づく。そこで、お金の専門家であるFP資格を取得し、一人ひとりの状況に応じたサポートを開始。FPとしての専門知識を深めることで「寄り添ってもらえる」「安心して相談できる」と評価されるようになり、成長を遂げる。現在は、主に老後資金への不安を抱える女性に対して、完全に独立したFPとして中立な立場でのFPコンサルタントを通して、適切な家計管理や資産形成をサポート、自由で豊かな老後を実現していただくための基盤づくりに貢献している。また、学びのマーケット「ストアカ」の講師として650名以上に対し資産運用などを教える講座を開催し、最高ランクのバッジである「プラチナ」を取得。現在も引き続き講師活動を展開している。

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