「NISAで積み立ててきたけれど、いつ売ればいいのかわからない」

50代のご相談者から、こうした声をよく耳にします。

老後が近づくにつれ、「増やす」ことより「どう使うか」が気になり始める。それは自然な感覚です。

しかし、投資のやめ時を探すこと自体が、実は間違いのはじまりかもしれません。

「一度に売る」と、あとは預金が減っていくだけという現実

たとえば、65歳時点で2000万円分のインデックスファンドを持っているとします。

これをすべて銀行預金に移し、毎年100万円ずつ使っていくと仮定すると、計算はシンプルです。残高は毎年100万円ずつ減り、20年後にはほぼゼロになります。

銀行預金には値動きがなく、計画が立てやすいメリットがあります。

一方で、お金を長持ちさせる効果はまったく期待できません。

さらに将来的に物価が上昇すれば、必要な支出が100万円を超え、資産が想定より早く底をつく可能性もあります。

せっかく積み上げてきた資産を、ただ減らしていくだけでよいのでしょうか。

「やめる」のではなく「少しずつ売り続ける」

ここで発想を転換してみましょう。

投資のやめ時を探すのではなく、運用しながら少しずつ計画的に売っていくという考え方です。

たとえば、毎年一定額(上記の例だと100万円ずつ)を売却しながら、残りのファンドは市場で成長を続けさせる方法がそのひとつです。これを「定額売却」と呼びます。

イメージとしては「井戸の水」です。

毎日必要な分だけ水を汲み上げても、底から自然と水が湧き出していれば、なかなか底をつくことはありません。

汲み上げる量をうまく調整することで、水を使い続けられる――そんな状態を資産でつくるわけです。

実際にどれだけ「寿命」が延びるのか

では、実際の数字で見てみましょう。

2000万円分のインデックスファンドを保有し、毎年100万円ずつ取り崩すケースを、1990年から2024年の全世界株式の過去データで検証しました。

開始時期を1年ずつずらした全16パターンのうち、最も成績が悪かったワーストケースでも、20年後に約930万円の資産が残っていました

銀行預金なら20年でほぼゼロになるところを、運用しながら取り崩すと「さらに約9年分」を上乗せできた計算です。

しかもこのワーストケースの20年間には、ITバブル崩壊とリーマンショックという二度の大暴落が含まれています。

それでも、資産寿命は20年から約29年へと延びたのです。

長く持ち続けることが、資産を守る

なぜ取り崩し期間を長く設定することが重要なのでしょうか。

過去データによると、全世界株式を1年間だけ保有した場合、リターンは最大で約50%もの幅で変動します。

しかし保有期間が長くなるほど振れ幅は小さくなり、15年を超えるとワーストケースでもリターンがプラスに収束しています。

つまり、「一気に売る」のではなく「約20年かけて少しずつ売る」ことで、一時的な市場の下落によるダメージを軽減し、資産寿命を延ばせる可能性が着実に高まります。

NISAだからこそ、手取りが守られる

こうした「運用しながら取り崩す」効果をさらに高めるのがNISAです。

課税口座で運用している場合、売却益には約20%の税金がかかります。

50歳前後から積み立て、65歳以降に20年以上かけて取り崩すような「長期運用」のケースでは、売却時に大きな含み益を抱えている可能性が高く、税負担も無視できない金額になります。

NISAの非課税枠を活用することで、運用で得た成果を100%手元に残すことができます。


「老後のお金をどう取り崩すか」。この問いへの具体的な答えを、一冊にまとめました。

NISAで積み立てを続けている50代の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

投稿者プロフィール

前野なおひと
前野なおひと老後資金づくりを支援するFP
1974年兵庫県生まれ。大阪府在住。
20年余りの会社員生活を経て、46歳で独立。

かつてはお金の知識ゼロから独学で投資を実践し、具体的な資産計画を描くことで、組織に縛られない自由な働き方を手に入れました。

現在は、保険・金融商品の販売を一切行わない、完全中立のFPとして活動しています。特定の商品をすすめる立場に立たないからこそ、ご家庭の状況と目標だけを起点に、老後資金づくりの計画策定から実行まで一貫してサポートできると考えています。

老後のお金に不安を感じている方が、「自分らしく、安心して暮らせる未来」を描けるよう、資産バランスの整え方や具体的な行動の道筋を、わかりやすくお伝えすることを活動の軸としています。

学びのプラットフォーム「ストアカ」では、資産運用講座の受講者が延べ700名を超え、最高ランクの「プラチナバッジ」を取得。書籍の執筆やブログを通じた情報発信にも取り組んでいます。

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