NISAとは、投資で得られた利益にかかる税金が免除される制度です。
老後資金や子育て資金など「将来のための資産をつくりたい」という目的に対して、NISAはとても有効なのですが、そのしくみが複雑なことが初心者が始めるときのハードルとなっています。
そこで本記事では、これからNISAを始めてみたいと考えているあなたのために、最初に知っておきたい基礎知識や、具体的な証券口座選び、商品選びなどについての記事をまとめて紹介します。
将来の安心と自由を手に入れるための、資産運用の第一歩としてご活用いただければ幸いです。
- 1. そもそもNISAとは?
- 1.1. 現行のNISA制度の概要
- 1.2. 2024年からの新制度について
- 2. 投資初心者には「つみたてNISA」がおすすめ
- 2.1. 金融庁が厳選した商品のみが対象となる
- 2.2. 少額の積み立て投資が前提の制度
- 2.3. 非課税期間が20年と長い
- 3. NISAを始めるタイミングはいつ?2024年まで待つべきか?
- 3.1. 投資タイミングより大事なこと
- 3.2. 現行NISAと新制度のどちらで始めるべきか?
- 4. 銀行とネット証券のどちらでNISAを始めるべきか?
- 4.1. NISAはネット証券会社で始めるのがおすすめ
- 4.2. 店舗型金融機関でNISAを始めるときの注意点
- 4.3. おすすめのネット証券会社はSBI証券と楽天証券
- 5. 投資信託の選びかた
- 5.1. つみたてNISAは投資信託を選んでからスタートする
- 5.2. つみたてNISA対象銘柄は株式重視となっている
- 5.3. つみたてNISAでおすすめの投資信託3選
- 6. さいごに
そもそもNISAとは?
NISAは「少額投資非課税制度」の略称であり、投資で得られた利益に対する税金が免除されるという、個人の資産形成を後押しするための優遇制度です。
金融庁の調べによると、2023年3月末のNISA総口座数(一般NISA+つみたてNISA)は1,873万口座であり、2022年末と比較して4%増加したそうです。
たくさんの人がNISAを利用していますが、それでも成人人口の2割程度であり、残りの8割はNISAを使用していないことになります。
しかし、後述するように2024年1月からNISA制度は大きく改正されて、より使いやすい制度に生まれ変わります。
今後、さらに口座数は伸びていくと予想され、近い将来には「日本人の半数はNISAをやっている」という時代がきてもおかしくないと思います。
現行のNISA制度の概要
現行のNISA制度には「一般NISA」、「つみたてNISA」、「ジュニアNISA」の3つがあります。
これらのうち、一般NISAとつみたてNISAはどちらかを選択して、成人一人につき一口座のみ開設できます。
一方、ジュニアNISAは17歳以下の子供が開設でき、運用・管理は親などの親権者が代行します。
年間投資上限額は一般NISAが120万円、つみたてNISAが40万円となっています。
一方、非課税期間は一般NISAが5年、つみたてNISAが20年です。
2024年からの新制度について
現行制度は2023年で廃止となり、2024年1月からは新しいNISA制度が始まります。
新制度では、現行の一般NISAは「成長投資枠」、つみたてNISAは「つみたて枠」と名前を変え、両者が併用できるようになります。
また、投資できる上限額が増える、非課税期間が無制限となるなど、条件が大きく改善されます。
年間投資上限額は成長投資枠が240万円で現行から倍増、つみたて枠が120万円で現行の3倍になります。
また、成長投資枠とつみたて枠を合わせた生涯投資上限額は1,800万円となります。
新制度では、かなりまとまった資金を運用できるようになるのですね。
なお、ジュニアNISAについては、新制度では廃止されます。
(現行制度でジュニアNISAを始めた人は、2024年以降に新規投資はできなくなりますが、非課税運用は継続することができます。)
投資初心者には「つみたてNISA」がおすすめ
もしあなたが投資・資産運用の初心者なら、現行制度ではつみたてNISAを選択することを推奨します。
その理由は主に以下の3つです。
つみたてNISAが投資初心者に最適な3つの理由
金融庁が厳選した商品のみが対象となる
少額の積み立て投資が前提の制度
非課税期間が20年と長い
金融庁が厳選した商品のみが対象となる
証券会社などの金融機関で販売されている投資商品はとてもたくさんの種類があり、玉石混淆です。
つみたてNISAでは、手数料が安いなどの基準を満たした金融庁指定の商品のみが対象となっています。
そのため、初心者でも商品選びで失敗する可能性が低くなります。
少額の積み立て投資が前提の制度
積み立て投資とは、金融商品を選んで毎月一定の金額で購入しつづけることです。
毎月の積み立ては少額であっても、長い年月続けることで大きな資産になってきます。
また、投資初心者が「投資商品の値動き慣れる」ためにも、少額積み立ては有効な方法です。
非課税期間が20年と長い
投資で成功するためにもっとも重要なのは、とにかく長く商品を保有し続けることです。
長期的には成長が見込める資産に投資しても、短期的な値動きは大きいため、投資期間が短いうちは元本割れの可能性があるからです。
つみたてNISAの非課税運用は20年間あり、長期保有することが前提の制度となっています。
つみたてNISAがおすすめな理由について、こちらの記事でより詳細を解説しています。
NISAを始めるタイミングはいつ?2024年まで待つべきか?
「昨今は、世界情勢が不安定だし、もう少し安定してから投資を始めたほうがよいかな?」
「来年の新制度まで待ったほうがよいかな?」
そのような悩みを持っている人も多いと思います。
結論としては、NISAを始めるのにタイミングを気にする必要はありません。
投資タイミングより大事なこと
資産運用を成功に導く3原則は、分散投資・積立投資・長期投資を実行することです。
この3原則を守ることが、元本割れする(自分が投資した金額を下回る)可能性を下げ、しっかりと将来資産を増やすことにつながります。
また、投資対象や投資時期を分散させたり、長期投資することで、投資タイミングの良し悪しの影響を受けにくくなります。
結局、いくら資産が貯まるかは「毎月いくら積み立てるか」✖「何年保有し続けるか」で決定づけられます。
タイミングを気にしている暇があったら、少しでも早く始めたほうが、長期運用できるわけですね。
現行NISAと新制度のどちらで始めるべきか?
2023年に特有の問題として、「現行制度で始めて良いのか、2024年の新制度を待った方が良いのか」ということがあります。
これについては、どちらでも問題はないのですが、「投資に慣れる」という意味でも2023年から始めることをおすすめしています。
もし現行制度で2023年中に開始した場合、2024年1月になったら同じ金融機関で自動的に新NISAの口座が開設されます。
また、一部の例外を除き、積立設定もそのまま引き継がれる可能性が高いです。
(積立設定については金融機関によって対応が異なる可能性があります。例えば楽天証券では、積立設定も引き継がれると公表されています。)
投資タイミングについての考えかたや、新制度への移行の詳細については、下記の記事で解説しています。
銀行とネット証券のどちらでNISAを始めるべきか?
NISA口座を開設できる金融機関は、店舗を持たない「ネット証券会社」と、銀行などの「店舗型金融機関」に大別されます。
これらのうち、商品選びで圧倒的に有利なネット証券会社でNISAを始めることを推奨します。
ただし、「窓口で相談できないのは不安」という方も多いですので、銀行でNISAを始める場合の注意点についても解説します。
NISAはネット証券会社で始めるのがおすすめ
ネット証券会社の利用者は、パソコンやスマートフォンを利用してインターネット経由で取り引きを行います。
すべての手続きを自宅で完結できるメリットがある反面、口座開設や積立設定などの手続きを自分でやる必要があることが、初心者にとってハードルです。
(ネット証券会社に店舗はありませんが、電話・メール・チャットでの問い合わせ窓口はあります。)
ネット証券会社の最大のメリットは、手数料が安いなど商品選びで圧倒的に有利なことです。
資産運用を長く続けていくうえで、手数料が利益に与える影響はとても大きいものがあります。
スタートするときの手続きはやや煩雑になりますが、銀行などの店舗型金融機関よりもネット証券会社を利用したほうが、長い目でみると将来受け取れる利益が大きくなる可能性は高いでしょう。
店舗型金融機関でNISAを始めるときの注意点
年配の方はとくに、ネット証券会社よりも銀行などを選択する人が多いと思います。
銀行や店舗型証券会社などでNISAを開始する場合は、以下のことに注意しましょう。
店舗型金融機関でNISAを始めるときの注意点
一般NISAではなく、つみたてNISA(つみたて投資枠)を利用する
投資対象についてアドバイスを求めない
店舗型金融機関の一般NISAでは、手数料が高く長期投資に不向きな商品を多く扱っています。
投資初心者が商品選びで失敗しないためには、金融庁指定の商品に限定されているつみたてNISA(2024年からはつみたて枠)を利用することを推奨します。
また、店舗型金融機関では、顧客の利益ではなく売り手の利益を優先した提案をされる可能性があることは知っておきましょう。
投資対象については、自分で調べて判断するか、金融機関に属さない中立的なアドバイザーに相談することをおすすめします。
おすすめのネット証券会社はSBI証券と楽天証券
ネット証券会社でNISAを始める場合は、大手2社のSBI証券か楽天証券をおすすめします。
その理由は、上記2社の口座開設数が圧倒的に多いからです。
たくさんの人が利用しているので、世の中に出回っている情報量が多いうえに、総合的なサービス力でもこの2社が優れていると思います。
「SBI証券と楽天証券のどちらがよいですか?」という質問も多くいただきます。
楽天市場や楽天ポイント、楽天カードなどを利用されている人は楽天証券がおすすめです。
また、ウェブサイトの使いやすさは、SBI証券よりも楽天証券のほうがやや勝っているかなと思います。
一方で、商品数や手数料など総合的なサービス力では、SBI証券がやや有利な印象です。
ただし、各社はサービスを競っており基本的には優劣つけがたいので、「どちらでも大丈夫!」というのが私の本音ですね。
ネット証券会社の選びかた、口座開設の流れや注意点などについて、以下の記事で詳しく解説しています。
投資信託の選びかた
ネット証券会社でNISA口座を開設した人のうち、おおよそ3割は商品選びで頓挫して運用をスタートしていないとも言われています。
つみたてNISAでは投資商品が限定されているものの、「どうやって選べばよいかわからない」というのは投資初心者に共通しているお悩みです。
そこで、初心者向けの銘柄について具体的にご紹介します。
つみたてNISAは投資信託を選んでからスタートする
NISA口座を開設しただけでは、投資は開始されません。自分で商品を選んで購入する必要があります。
一般NISAの投資対象は、株式や投資信託などから幅広く選択できます。
一方、つみたてNISAでは金融庁が指定した約200種類の投資信託が対象商品となっています。
投資信託とは、運用会社が出資者から資金を集めて、たくさんの投資対象に分散投資するというしくみの金融商品です。
一人ひとりの出資者は、少ない資金で多くの投資対象に分散投資できるメリットがあります。
また、投資信託を保有していると、信託報酬と呼ばれる運用管理手数料が徴収され続けます。
信託報酬が高いと、投資信託を長期保有する場合に不利になりますので、「似た投資先の商品であれば、信託報酬は安いほうがよい」ことを覚えておきましょう。
つみたてNISA対象銘柄は株式重視となっている
つみたてNISA対象銘柄には、①株式のみで構成されている「株式型」と、②株式+他の資産(債券やリート)で構成されている「バランス型」があります。
いずれの場合も、長期的な値上がりが期待できる株式を含んでいるのが特徴です。
一方、株式は短期的な値動きが大きいため、投資家の精神的負荷が大きくなる懸念があります。
そこで、株式以外の資産を組み入れることで値動きを小さくしようとしているのが、②のバランス型です。
値動きに反応しやすい人や、投資期間が短くなってくる中高年の世代はバランス型を選択するのもよいかもしれません。
つみたてNISAでおすすめの投資信託3選
「未経験者がつみたてNISAで投資デビューするのに適したもの」という目線で選んだ投資信託を3つご紹介します。
つみたてNISAでおすすめの投資信託3選
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
SBI・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま)
楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型)
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)とSBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま)の2銘柄は、いずれも全世界株式に連動した値動きをします。
これら2銘柄の特徴は、世界中のたくさんの国や地域に分散して投資していることです。
将来は不確実だからこそ、投資先を広く分散しておくことは重要であり、長期保有するほど「世界経済の成長」を取り組むことができるでしょう。
楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型)の投資対象は、全世界の株式市場と債券市場です。
株式と債券の割合は7:3となっています。
株式市場の成長を享受しながらも、債券部分が「クッション」の役割を担い、全世界株式のみの場合と比べて値動きがマイルドになる可能性が高くなります。
投資信託についてのより詳しい基礎知識を知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
さいごに
2024年からのNISA制度改正は、日本人の投資環境を大きく変える画期的なものです。
夫婦二人なら1,800万円×2で、3,600万円もの生涯投資枠があることになり、多くのご家庭にとって「NISAで老後資金をつくる」ことがより現実的な選択肢になりました。
投資にリスクがつきものと言われますが、そのリスクの意味を知ることが重要です。
資産運用についての知識を習得すれば、運用のリスクを過剰に恐れる必要はないことだけでなく、銀行預金だけに頼るリスクもあることがわかってきます。
投資について、買ったり売ったりを繰り返すような行為をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、短期的な売買は投機であり、投資とは違います。
投資とは、自分のお金を長期的に出資し続けることで、将来の資産を増やしていく行為です。
世界経済の将来の成長に先行投資することで、参加者全員が利益を享受できる大きな流れに乗るのだということを、ぜひ知っていただければと思います。
投稿者プロフィール
- 「人に教える仕事がしたい」という想いから会社を辞めて独立し、以前から取り組んでいた投資の知識を活かして資産運用講座をスタート。ところが、受講者の多くが抱えている老後資金への不安を解消するには、資産運用の知識だけでは不十分であり、家計や保険、年金など幅広い「お金の知識」が必要なことに気づく。そこで、お金の専門家であるFP資格を取得し、一人ひとりの状況に応じたサポートを開始。FPとしての専門知識を深めることで「寄り添ってもらえる」「安心して相談できる」と評価されるようになり、成長を遂げる。現在は、主に老後資金への不安を抱える女性に対して、完全に独立したFPとして中立な立場でのFPコンサルタントを通して、適切な家計管理や資産形成をサポート、自由で豊かな老後を実現していただくための基盤づくりに貢献している。また、学びのマーケット「ストアカ」の講師として650名以上に対し資産運用などを教える講座を開催し、最高ランクのバッジである「プラチナ」を取得。現在も引き続き講師活動を展開している。
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