「つみたてNISAの非課税期間が終わったあとはどうすればよいでしょうか?」というご質問をいただきましたので、対処法について解説したいと思います。

結論としては、そのまま放置しても(税金面で)損をすることはないので安心なのですが、新NISAへ再投資して非課税運用を継続させることも可能です。

「つみたてNISA」の20年非課税ルール

「つみたてNISA」は、2023年末で新規投資が終了した旧NISA制度です。(2024年1月からは新NISAに移行されています。これは後述します。)

「新規投資」は終了していますが、2023年以前につみたてNISAを始めた人(投資信託を積立購入していた人)は、自分で売却しないかぎりは引き続きNISA口座内で投資信託を保有している状態になっています。

つみたてNISAには「投資をした年から20年間は非課税になる」というルールがあり、新規投資が終了した現在もこのルールは変わっていません。

たとえば、2023年に積立購入したものは、2023年を含めて20年間(2042年まで)つみたてNISA内で保管できます。

そして、つみたてNISAで保有していた投資信託は、売却などの手続きをなにもしない場合、非課税が終わる翌年の2043年に自動的に「課税口座」に移管されます。

このようなルールを踏まえて、冒頭の「非課税期間が終わったあとはどうすればよい?」という疑問につながるわけです。

非課税期間が終わるまでに売却する必要がある?

つみたてNISAの20年間非課税というルールを知っている人が疑問に思うのは「20年以内に売却したほうがよいかどうか」ということです。

この答えは、「かならずしも売却しなくても問題ない」です。

たとえば2023年に40万円分の投資信託を購入して、20年経った2042年末に100万円に増えていたとします。

このとき、なにもせずに放置したとすると、100万円の価値となった投資信託が2043年1月に「課税口座」に自動移管されます。

そして、つみたてNISAに保管していたあいだに増えた分(100万円ー40万円=60万円)の非課税が確定します。

課税口座に移管されたあとは、「100万円で新たに投資信託を購入した」のと同じ状況になります。

つまり、100万円より増えたときに売却すればその分にだけ税金がかかるし、100万円より減ったときに売却すれば税金はかかりません。

たとえば、120万円になったときに売却したら、120万円ー100万円=20万円の利益に対して課税されるのです。(現在の税率で20%なので、20万円✕20%=4万円が納める税金。)

20年間で増えた分の非課税は確定される」ので、非課税期間が終わるまでに売らないと税金面で損をする、ということはないわけですね。

「つみたてNISA」と「つみたて投資枠」の違いについて

つみたてNISAの出口戦略を考えるうえで、もう一つ知っておきたいことがあります。

それは、2024年1月からスタートした新NISAについてです。

つみたてNISAを利用していた場合、2023年12月時点での積立設定が、2024年1月からは自動的に新NISAの「つみたてNISA投資枠」に引き継がれています

そのため、積立設定をなにも変更していない人は、2023年12月までの投資分は「旧NISAのつみたてNISA」に、2024年1月からの投資分は「新NISAのつみたて投資枠」にそれぞれ保管されている状態になるのです。

毎月積み立てているのは同じ投資信託でも、2つの箱に別々に保管されている状態になるわけですね。

また、新NISAでは非課税期間が無制限になりました。そのため、つみたて投資枠に保管している投資信託は「生涯ずっと非課税」です。

つみたてNISAのおすすめ出口戦略について解説

ここまでの説明を踏まえて、私が考えるおすすめの「つみたてNISAの出口戦略」をお伝えします。

これには、20年後の状況によっていくつかパターンがあります。

①すぐに使う予定がある場合は売却する

ひとつ目の出口は、すぐにお金を使う必要があるなら売却して現金化することです。

新NISAのつみたて投資枠は非課税が無制限なので、旧つみたてNISAに保有している投資信託から先に売却したほうがよいです。

ただし、売却したお金をすぐに使う予定がない(支出は預貯金でまかなえる)なら、売却して銀行預金に戻したら運用が終わってしまうのでもったいないです。

②すぐに使わない場合は、新NISAに再投資する

すぐに現金化して使う必要がないなら、そのまま投資信託として保有し続けるほうが将来的により増える可能性が高くなります。

そのときに、税金面でよりお得に保有できる方法があります。

それは、つみたてNISAで保有していた投資信託をいったん売却して、新NISAに再投資するという方法です。

たとえば、前述と同じく2023年に購入した投資信託が2042年末時点で100万円に増えていたとします。

このとき、2042年が終わる前に100万円分の投資信託をいったんすべて売却します。非課税期間内なので税金はかかりません。

そして、売却したあとに新NISAを利用して100万円分の投資信託を新規購入するのです。

こうすることで、間接的ではあるものの「保有していた投資信託を、つみたてNISAから新NISAにお引越し」できるというわけです。

売却したときにいったん利益は確定しますが、その利益も含めて再投資することになるため、「ずっと運用を継続している状態」と考えることができます。

一つ注意点としては、新NISAには生涯投資上限が1,800万円というルールがあります。

そのため、20年以内に新NISAで満額投資する予定の人は、つみたてNISA分の再投資はできません。

新旧NISAでルールが大きく変わったため、使いこなしが複雑になった部分はあります。

しかし、NISA制度全体としては「個人の資産形成により有利な方向」に改善されたのは間違いありません。

うまく使いこなして、効率的に資産形成していきましょう。

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投稿者プロフィール

前野なおひと
前野なおひと老後の安心を育てる🌱資産形成・お金のパートナー
「人に教える仕事がしたい」という想いから会社を辞めて独立し、以前から取り組んでいた投資の知識を活かして資産運用講座をスタート。ところが、受講者の多くが抱えている老後資金への不安を解消するには、資産運用の知識だけでは不十分であり、家計や保険、年金など幅広い「お金の知識」が必要なことに気づく。そこで、お金の専門家であるFP資格を取得し、一人ひとりの状況に応じたサポートを開始。FPとしての専門知識を深めることで「寄り添ってもらえる」「安心して相談できる」と評価されるようになり、成長を遂げる。現在は、主に老後資金への不安を抱える女性に対して、完全に独立したFPとして中立な立場でのFPコンサルタントを通して、適切な家計管理や資産形成をサポート、自由で豊かな老後を実現していただくための基盤づくりに貢献している。また、学びのマーケット「ストアカ」の講師として650名以上に対し資産運用などを教える講座を開催し、最高ランクのバッジである「プラチナ」を取得。現在も引き続き講師活動を展開している。

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